

Art-Loving vol.5

APOCシアター提携公演

作:畑澤聖悟
演出:まんぼ
何故、コロナ禍の今、「親の顔が見たい」を上演するのか?
これは全ての舞台がそうであるべきとは思いませんが、私自身は、作品選びをするときに、なぜこの作品が今なのか?という問いを必ず持ち、そこで熟考してから作品を決めます。
この作品について、その都度感じていた事は、単なる学校で起こった、暗くて重い、いじめの話だけではないという事です。いじめはストーリーの1つの事件に過ぎない。大切なのはその事件を機に、そこに登場する登場人物たちがどう思考し、行動するか、というところにあるのだと思います。
緊急事態宣言明けの分散登校が始まってから、北海道の中学1年生の男子児童が自殺したというニュースを目にしました。コロナによる休校明けに、また教室から悲しい事件が起きてしまいました。
コロナによる休校期間で、子どもたちの心は、私たち大人が考えている以上に不安でいっぱいになっています。2~3ヶ月に及ぶ自宅待機によるストレスなど、内面を解放できない自粛生活による環境下での影響が各所で出始めています。本来ならば休校明けにそういった不安心理に寄り添うべきところですが、現在の学校は、学業の遅れを取り戻すことばかりに躍起になっていて、子どもたちだけでなく、教員たちも疲弊している毎日だと思います。
慣れない新しい日常の中で、人と接触する制限をかけられ、自由を謳歌することもなく、満足に遊ぶ時間すら無いのが現状でしょう。
私自身も2か月前に、とある学校で演劇プロジェクトの伴走をしていました。子どもたちがどれだけ疲弊していたのか、通常登校が始まった時に、強く感じました。その疲弊した心をどう補おうとするのだろうか。それは他を攻撃する事で、自己を何とかコントロールしようとするかもしれません。平時でなく、有事の時こそ、そういった防衛本能が働くのも、人間が動物的本能を持ち合わせている証拠ではないでしょうか。
これは、学校だけでなく、コロナというウイルスによって、人々の心が更に排他的になっている現状にとても危機感を覚えます。大国のトップがコロナを感染させたのは誰か?と犯人探し、相手を攻撃する事で、自分自身を防衛したり、自己保身したりする光景もあちらこちらで目にします。これはいじめと全く同じ理屈です。私は、こういう有事だからこそ、人は感情的に相手を攻撃したり、排除したりするのではなく、思考的に行動すべき、と考えます。
そして、どこか他人事に捉える方々が多いなと感じてきました。
いじめなんて、可哀想な境遇の人たちのお話で、私には直接関係ない、という声も聴こえました。うちの子にかぎって、などという言葉はその最たる例ですね。しかし今は、全世界が共通するコロナという課題を抱え、全員に当事者意識が芽生え、新しい生活、新しい日常について思考し始めています。リモートワーク、オンライン授業等の発想は、対面が前提であるこれまでの日常であれば考えられなかった事だと思います。こういった時だからこそ、「いじめ」という人が起こす問題について、冷静に思考してもらうチャンスなのではないか、と考えました。
故に、今回はコロナ禍で、休校明けに起きたいじめ事件という設定にしたいと考えています。
2020年9月16日(水)~22日(火) 全10ステージ

Art-Loving×APOCシアター「親の顔が見たい」チケット予約開始は、8月16日(日)午前10時からです。
今回は、受付での金銭授受等、感染防止対策の都合上、当日精算でのご予約はお受けしておりません。
全て事前決済となっておりますので、皆さまのご理解ご協力のほど、 何卒宜しくお願いいたします。
【劇場鑑賞】
一般 ¥4,000 / パンフレット付き ¥4,500
学生 ¥2,000 / パンフレット付き ¥2,500
【オンライン鑑賞】
一般 ¥3,000